コラム:一帯一路と金融ー金融は地政学を超えアジアを繋ぐー 田代秀敏

投稿者: | 2018年3月15日

一帯一路と金融 −金融は地政学を超えアジアを繋ぐ−
田代秀敏 tashiro.hide@gmail.com
シグマ・キャピタル株式会社チーフ・エコノミスト

“一帯一路の構想は、洋の東西、そしてその間にある多様な地域を結びつけるポテンシャルをもった構想です”(2017年6月5日)。“一帯一路については、インフラの開放性、透明性、経済性、財政の健全性など、国際社会共通の考え方を十分に取り入れることで、地域と世界の平和と繁栄に前向きに貢献していくことを期待しています”(同11月14日)、“我が国は、この自由で開かれたインド太平洋戦略の下、一帯一路の構想を掲げる中国とも大いに協力できる”(同12月14日)。これらは全て安倍晋三総理の公式発言である。

しかしメディアは安倍総理の意向を忖度しない。例えばNHKは2018年01月25日『国際報道2018』で“中国の「一帯一路」構想に警戒感を示すインドのモディ首相”の“ASEANとのつながりを強化する「アクト・イースト」政策がいよいよ本格的に動き出す”とし、“日本、オーストラリアそしてインド。中国が自信を深める中、各国が警戒を強めていく流れは今後、更に加速していきそうです”と述べ、中国に対する危機感を煽った。

ところが、「一帯一路」に金融面で寄与しているアジア・インフラ投資銀行(AIIB)の第3回年次総会を2018年6月にインドのムンバイで開催することが昨年12月12日に正式決定された。インドはAIIBへの出資比率が中国に次いで第2位である。AIIBは昨年5月にインドへの初融資を世界銀行(WB)と協調して行い、AIIB初の出資案件(1.5億㌦)はインドのインフラ投資ファンドに対して昨年6月に行われた。AIIBとアジア開発銀行(ADB)ADBとの協調融資は、パキスタン、バングラデシュ、ジョージア(グルジア)に次いで4番目にインドに対して行われた(5千万㌦)。インドはAIIBからの資金調達が10億㌦を超える世界最初の国となったことを、昨年12月、AIIB副総裁Danny Alexanderが明らかにした。こうしてインドは、AIIBを介して、「一帯一路」に実質的に組み込まれている。

2030年まで毎年1.7兆㌦が見込まれるアジアの巨大なインフラ需要を背景に、金融は地政学を超えアジアを繋いでいく。その動向に日本が出遅れることは、人口が急減していく日本の将来を危うくするだろう。「一帯一路」の金融面からの研究は国家的な急務である。

 

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