コラム:一帯一路再考 中川十郎

投稿者: | 2017年7月15日

BIS論壇No.234 2017年7月5日 日本ビジネスインテリジェンス協会会長 中川十郎

7月3日、国立研究開発法人・科学技術振興機構主催で「日中科学技術交流シンポジウム」が開催され参加した。同会議には松野博一・文部科学大臣、中國から万 鋼・中国科学技術部長(大臣)ほか日中の科学技術専門家が参加した有意義なシンポジウムであった。

同会議には岸 輝夫・外務大臣科学技術顧問、安西裕一郎・日本学術振興会理事長、里見 進・東北大学総長、藤嶋 昭・東京理科大学学長、松本洋一郎・理化学研究所理事など。中国からは許 諒 科学技術部イノベーション局長、続 超前・ハイテク副局長など日中の科学技術の専門家が多数参加した。

日中の科学技術共同研究は1978年の日中平和友好条約締結を機に結成され、2018年に結成40周年を迎える。この間、研究者の交流、共同研究支援、交流基盤の形成、支援など長年日中間での交流が地味に続けられている。平成27年度の中国人研究者の受け入れは502人に達し、3914人中8分の1が中国からである。日本人研究者の中国派遣も5400人中376人で両方とも中国が最大のシェアーを占めている。

中国からの科学技術研究留学生の中国同窓会(会長:孔 徳新・天津医科大学教授)も設立され、1300人が会員となり、日中の科学技術交流促進に努めている。山東、北京、重慶、上海になど7地区に33支部があり活発な活動を展開していることに感銘を受けた。

中国は科学技術においても長期的な視野のもとで、13次5か年計画を踏まえ、2030年を目標に科学技術分野の壮大な発展戦略を推進中である。中国全土に4298の科学技術創造センター、3000のイノベーションセンター、400の科学技術革新推進センターを設立。人工知能、高速コンピューターを含めた世界最大の高度科学技術の中心になろうとの野心的な計画を打ち出している。 2017年のThe Global Innovation Indexでは日本の14位に対し、中國は22位に躍進し、日本に急速に肉薄しつつある。

驚いたことに万 鋼・科学技術部長(大臣)、続 超前・ハイテク副局長の講演では「一帯一路」参加国において国際的な科学技術の深化、協力を国家的に全面的に推進し、「一帯一路」先端科学技術イノベーション共同体構築に全力を注ぐとの発言がたびたびあったことである。かかる観点から中国の「一帯一路」にかける国家戦略は単なる経済、国際物流網構築、インフラ建設のみでなく、ハイテク科学技術、文化、教育、環境、福祉など幅広い分野に及んでおり、中國がユーラシア、中東、アフリカなどを巻き込み、長期的視野に立った、地球規模の壮大な戦略で対応していることに感銘を受けた。

安倍政権は「一帯一路」は中国の過剰設備、過剰産品の輸出志向だなどと一面的な見方で批判しているが、中国の「一帯一路」戦略は戦後のヨーロッパの経済復興を目指したマーシャル・プラン、世界経済再構築を志向したブレトンウッズ体制下の世銀、IMF, GATTなどを超える壮大な21世紀のユーラシアを中心とする中国のグローバル戦略であることを日本としても正しく評価し、可及的速やかに「一帯一路」、「AIIB」に参加することこそ日本の喫緊の課題であることを痛感させられた日中科学技術シンポジウムであった。

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