コラム:一帯一路 北京首脳会議について 中川十郎

投稿者: | 2017年5月16日

BIS論壇No.225 2017年5月16日 日本ビジネスインテリジェンス協会会長 中川十郎

5月14~15日の2日間にわたり北京で開催された初の「一帯一路」首脳会議には70の国際機関、130か国の代表、29カ国の首脳を含め1500名が参加した。「一帯一路」沿線国は64か国、世界人口の60%、GDPは30%を占める巨大経済圏が動き出す。日本のテレビ、メデイアは中国主導で透明性、ガバナンスの面からとらえ、概して「一帯一路」に懐疑的で批判的な論調が多い。いかにも日本中心の見方で、歴史的考察、マクロの観点が欠落している。一帯一路が目指す21世紀を見据えたアジアからユーラシアを経てヨーロッパに至る物流、インフラ、貿易網構築の視点が抜けている。この21世紀最大のプロジェクトは古代のシルクロードの貿易、文化、ヒトの交流の現代版だ。戦後米国が欧州復興に打ち出したマーシャルプラン。さらにアジアアフリカのAAバンドン会議。世界銀行、IMFを創設したブレトンウッズ体制にも匹敵する壮大な計画である。日本は犬の遠吠えよろしく隣の中国のアジア、中央アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパに至る、広域経済協力計画を冷たく批判するだけでなく、中國と協力しこの21世紀の野心的な計画の推進、成功に協力すべきである。それが20年以上にわたりG7の中で最低の経済成長の低迷を続けている日本経済活性化のためにも必須であると考える。

地政学者で有名な英国のマッキンダーは『ユーラシアの心臓部、中核を制する者が世界を制する』と主張。米国のスパイクマンは『ユーラシア大陸の周辺沿岸部を制する者はユーラシアを制し、世界を制する』と喝破。カーター大統領補佐官のブレジンスキーは『地球上で最も重要な舞台のユーラシア大陸への積極的関与が、米国の覇権維持のために必須だ』と21世紀に最大の発展をするユーラシアの重要性を強調している。グローバルビジネス・グローバルマーケテイングの観点からも21世紀はユーラシアを制する者が世界を制する。このように21世紀はユーラシア大陸が世界の貿易・投資の主戦場になることは経済史的にも地政学上も間違いない。日本はアジアからヨーロッパに続く世界最大の版図を有するユーラシアの重要性を認識し、一帯一路、AIIBへの参加を、日本の21世紀戦略として、この機会に真剣に考えるべきである。

北京首脳会議の最終日に習近平主席は次の点を強調した。

1.一帯一路を平和、繁栄、開放、創新、文明の道に
2.400億ドルのシルクロード基金を1千億元(躍1兆6400億円)増資する。
3.中国国家開発銀行、輸出入銀行がインフラ整備などに3800億元の特別貸し出しを行う
4.会議期間中30以上の国と経済・貿易の取り決めに調印。関係国と自由貿易協定を協議
5.2018年から中国輸入博覧会を開催
6.今後3年間に一帯一路建設に参加する途上国と国際機関に600億元を援助
7.一帯一路沿線の途上国に20億元の緊急食糧援助
8.国際機関による沿線国家への協力事業に10億ドル(約1130億円)を提供

一帯一路の沿線国は64か国。将来は北極海航路も海のシルクロードとして活用されよう。

ADBの予測ではアジア太平洋地域の30年までのインフラ需要は年間、1.7兆ドル。

これに対し、ADBの16年度の融資額は175億ドル。総需要のわずかに1%を満たすに過ぎない。AIIBやシルクロード基金、BRICS開発銀行などの融資が不可欠となる。

インドネシア初の高速鉄道はジャカルタとバンドン間140キロの総工費50億ドル(5700億円)で中国の資金供与で建設することが今回本決まりになった。中国新疆ウイグル自治区とインド洋に面するパキスタンのグワダル港を道路や鉄道で連結するプロジェクトも動き出している。

ロシアが主導し、カザフスタン、ベラルーシ、アルメニアが参加のユーラシア経済同盟(EEU)も一帯一路への参加で、ホルゴス国際国境協力センター、中國とオランダを結ぶ道路回廊は10年に時速150キロの高速道路建設が開始されている。14年にイランをつなぐ鉄道も開通し、ぺルシア湾経由で中東やアフリカへの物流網が完成している。このように中央アジアは陸の物流のハブになりつつある。

石油の多くはマラッカ海峡を通じて輸入されているが、ミャンマー、バングラデシュ、スリランカ、パキスタンなどに出資し、港湾建設を構え、中國はシーレーンの確保にも力を注いでいる。11年には重慶と欧州の直通貨物列車が開通している。

一帯一路の構想ルートは陸路が中国から①中央アジア、ロシアを経由して欧州へ、②中央アジア、ぺルシア湾を経て欧州へ ③東南アジア、南アジアからインド洋の三つ。海上は④南シナ海、インド洋から地中海、⑤南シナ海から南太平洋の二つがある。

このようにアジア、中東、欧州の地域のつながりを密接にし、各国の経済発展を促す。各国をつなぐ鉄道や高速道路、港湾を建設。石油や天然ガスのパイプラインや情報インフラも整備し規格の標準化も目指している。

習国家主席は2013年9月にカザフスタンで中国と欧州をつなぐシルクロード経済ベルトの建設を提唱した。それからわずか3年半弱で北京で130カ国を集めた一帯一路首脳会議にまでこぎつけた。次回の首脳会議は2年後の2019年に中国で開催される。

一方、BRICS首脳会議は福建省のアモイで9月上旬に開催される。ここではAIIBやシルクロード基金とBRICS開発銀行の協力も話し合われるだろう。

今回有力国のインドは中国とパキスタンの経済回廊が係争地域のカシミールに関係しているところより、高官は派遣しなかった。

しかし米国は閣僚よりは格下ながら米国家安全保障会議(NSC)のボデイガ-・アジア上級部長を団長として送り込んだ。韓国政府代表として与党の「ともに民主党」のパク・ピョンソク議員が参加。習主席は14日個別に面談し、中韓関係は非常に重要で関係発展はアジアを超えて世界平和にもきわめて重要だと語ったという。北朝鮮からは金・対外経済相が参加。中米韓、北朝鮮の関係者が一帯一路の北京首脳会議に参加した。経済を通じてこれら関係国の友好と平和がさらに促進されることを強く期待したい。

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