コラム:AIIBと一帯一路戦略⑵ 中川十郎

投稿者: | 2016年7月31日

BIS論壇No.190 2016年7月31日 日本ビジネスインテリジェンス協会 中川十郎

さる7月28日、日中関係学会7月度研究会が神田・学士会館であった。北京の対外経済貿易大学に1年間留学した元参議院勤務の杉本勝則氏が「中国を見誤らないための3か条」~体験的政治論と中国論~と題して興味ある発表をされた。中国を見る場合、日本の常識、思い込みで考えないこと。人口が日本の10倍、国土面積が25倍あることより、常に日本の10倍を念頭に置いて考えること。よい人が10倍いれば悪い人も10倍いる。日本で報道される中国のネガテイブ情報は一面では事実だが、それが本質的、構造的な問題なのか。中国の一部、一面にすぎないのかを考えることが必要不可欠だ。中国は一つの国でなく、先進国と途上国が併存していると考えれば国内矛盾の問題はない。など現地に生活し、勉強した経験からきわめて示唆に富んだ指摘に感銘を受けた。

同氏が現地を視察し、現場情報を基に考察した「一帯一路」についてもシルクロード経済ベルトの現実をしっかり見極めることが重要との指摘があり全く同感だ。新疆現地視察の結果、すでに2年前に工業団地、物流基地は完成している。ウルムチまでの新幹線は一昨年末に完成。高速道路もカザフスタンの国境まで完成。新幹線は3年後にカザフスタン国境まで完成とのことだ。完成済みの中国側インフラを西方諸国にどうつなぐかのインフラ整備が「一帯一路」と「AIIB」による融資だ。新疆には韓国人とイスラエル人が多く訪問している。東のウイングに加え、西のウイングも完成させることで、ユーラシア大陸の中心に君臨することが「現代の中国夢」であると喝破された。

立命館大学・周章生教授によるとシルク経済ベルト構想は1830年にGDPは世界の30%を占めるほどの大国であった中国が過去の栄光を取り戻すべく陸と海のシルクロードの復興、共栄、資源、市場、安全の確保を目指すものだ。「これらの地域の人口30億人のシルクロード経済ベルトの市場規模と潜在力はほかに類がない。太平洋からバルト海に至る基幹道路の整備や人民元と各国通貨の直接交換取り引きの拡大を目指し、地域大協力を形成する構想」であるとし、①ユーラシア各国の経済的結びつきを緊密化し②輸送路の連結の強化、③貿易の円滑化強化④通貨流通の強化、地域経済の国際競争力強化⑤人々の心のつながりと友好的往来の強化を目指すとしているとのことだ。(東アジア論壇第10号)

すでに2016年4月には中国からフランスのリヨンまで11300キロの鉄道貨物を16日で運搬する直行便が実現した。日本の日本通運も欧州~中国間の鉄道輸送サービスとトラック輸送を手掛けるという。(日経7月26日)。この様なユーラシア大物流網の整備、沿線国のインフラ整備が昨年設立されたAIIB(アジアインフラ投資銀行)の融資も連動して始まった。シルクロード基金、SCO開発銀行に加え、7月20日にはBRICS開発銀行も始動。

出資5カ国それぞれの国の新エネルギー事業への9.1億ドル(約970億円)の融資も決定した。

アジアとヨーロッパを結ぶ画期的な21世紀の最大のユーラシアシルクロード計画が動き出しつつある。日本としても出遅れることなきようAIIBへの早急なる参加と、21世紀のユーラシア大物流プロジェクトへ今こそ速やかに参画し、東西の貿易拡大に協力すべき時だ。

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