コラム:AIIBと一帯一路戦略 中川十郎

投稿者: | 2016年7月10日

BIS論壇No.187 2016年7月10日 日本ビジネスインテリジェンス協会会長 中川十郎

中国主導の「AIIB」と「一帯一路」戦略について、日本では「AIIB」は中国の景気停滞と過剰設備による過剰製品のはけ口としてユーラシア、アジアを中心にインフラ投資を拡大し、「一帯一路」を中国の輸出のためサプライチェーン、物流構築が主眼だとの見方が強い。

AIIBにしても一帯一路にしても、その影響や将来性に関して、日本では近視眼的で将来展望を欠いている批判的論調が多い。AIIBは年末には現行57か国に加え新たにアジア、東欧、アフリカ、南米を含め24カ国の加入で81か国の巨大国際投資銀行が出現する。

日本は米国に追随しAIIBには不参加で、このままでは将来インフラ投資でAIIBに遅れを取る可能性が高い。AIIBは中国主導でGovernanceがなく、また環境問題、人権問題に関しても問題だとして、日本はこれを不参加の理由にしている。問題があるなら、AIIBに参加して内から改革をするのが筋で、加盟もしないで外から遠吠えで批判しても始まらない。

1996年に上海ファイブが結成されて以来、筆者はグローバルマーケテイングの観点からSCO(上海協力機構)や中央アジア、ユーラシアを20年間研究しているが、「AIIB」にしても「一帯一路」戦略にしても日本はその影響力を過小評価しすぎている。外から批判ばかりしておるようでは、将来、日本は悔いを千載に残すことになるだろう。

さる6月30日、東アジア評議会、7月2日、国際文化会館で、AIIBとADBに絡むアジアの地域問題やこれら国際機構や日米関係について講演したアジア開発銀行米国大使を務めたオアー氏は米国も日本もAIIBに参加すべきだと強調したのに驚いた。しかしこれが日米識者の正論であろう。日本はAIIB加盟に際し米国に出し抜かれぬように注意すべきだ。

一方、「一帯一路」戦略は日本が軽視している以上にアジア、中央アジア、ユーラシアを連結する100年の大計から中国が推進する壮大な世界物流、エネルギー資源環境戦略である。ユーラシアの人口30億人の「シルクロード経済ベルト」でユーラシア各国と共同で経済的結びつきを一層強化、緊密化する計画だ。陸、海の輸送路を強化し、太平洋からバルト海にいたる陸、海大輸送網を構築し、東アジア、西アジア、南アジアのサプライチェーンで、貿易、投資、金融の強化を図る。そのためにAIIB(資本金1000億ドル)、BRICS開発銀行(500億ドル)、中国全額出資のシルクロード基金(400億ドル)、SCO開発銀行(500億ドル)などの金融投資銀行の融資を活用するとともに、WB(世界銀行)、ADB(アジア開発銀行)、EBRD(欧州復興開発銀行)など既存の国際銀行との協調融資も活用する方針だ。このようにシルクロード経済ベルト構想は東側のアジア太平洋経済圏、西側の欧州経済圏を結び、その中間圏の中央アジア、ユーラシア諸国を結節する、発展潜在力のある21世紀の巨大経済圏構築を目指している。これらの地域に賦存する豊富なエネルギー、鉱物資源、観光資源を活用し、交通、通信、繊維、食品、農産品加工、化学工業、機械製造業、先端技術協力、金融、投資協力などにより砂漠化防止、太陽光、風力、地熱発電などで、将来の環境保護にも注力する。このような壮大な新シルクロード戦略に日本も積極的に参加する方策を検討することこそ肝要だ。批判からは何も生まれないことを日本は銘記すべきだ。

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